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ジョイント195

自分が思いついた文章を徒然なるままに書くブログです。二次創作系。がんばっていきます!
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過去
まずはR254さん!リンク、こちらも貼らせていただきました。ありがとうございます!そしてこれからもよろしくお願いします!
さて今回は…爽やかなようで、シリアスなようで、切ないようで、ニヤニヤするような…?そんな話です。どうなんだろか。これ。って感じです!佐々木さん初登場!メインっぽいけどハルキョン!人によってはこのキョンが許せなくなるかも。あと佐々木さんの扱いちょっとひどいかも…。
まあ一応頑張ったんで、見てくれると嬉しいです。どうぞ!



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中学時代のことだった。俺には一人、仲の良い女の子がいた。名前は佐々木。
ただ塾が一緒なだけで、たまたま隣の席だったりして親しくなった。自転車の後ろにアイツを乗せてバス停まで送って。そんな毎日だった。佐々木は変わった奴だったと思う。男と話す時は、何故か男言葉を使い、色んな理論で相手を丸め込んだりする。相手が女子の場合は普通の言葉使いで普通に接する。
変わっていた。変わっていたと思いつつもあまり気にならなかった。そういう意味では俺も変わっていた部類に入るのかもしれない。頭の良いやつで、勉強でつまづくと教えてもらったりもしていた。そんな日々だった。
だが――――一日だけ、本当に一日だけ俺たちに特別なことが起こった。いや違う。佐々木が起こした。その行動の意味は理解していた。理解していたのに俺はその時に分からなかった。何がしたくて佐々木がそうしたのか。それでも今なら分かる。ふとあの時のことを思い出して、考えて、分かってしまった。当たり前の答えだったのにその時には気付けなくて、今やっと気付いて、後悔の念が俺を襲った――――。

/////////////////////////////////////////////////////

「アンタなんか変よ?」

帰り道。二人で歩く。その時にふとハルヒから声をかけられた。

「どこがだ?」

「話してる時、たまに上の空になるでしょう?自分じゃ分からないの?」

分からなかった。覆い隠したつもりだったから。だがやっぱりハルヒにはすぐに気付かれてようだった。勘の鋭い奴だから。

「まあ…疲れてんのかもな」

俺はごまかしになっていないごまかしの言葉を吐いた。自分でも嫌だった。こんな自分。

「ふ~ん…」

やっぱりハルヒはいぶかしげな視線を俺に向けてくる。こんなごまかしではやはり通用しない。だから方法を変える。

「ま、気にすることじゃないさ。大丈夫だ。今お前とキスすれば一気に吹っ飛ぶ」

「えっ!?って!キ…キスは一日一回って言ったじゃない!さっきしたばっかりで…その…あの…」

今までの表情はどこへいったのか。付き合って数ヵ月。ハルヒはまだこんな言葉になれてない。こういったところはすごく純粋で、愛しかった。

「ダメなのか…?」

「だっ、だって!…そう…決めたんだし…その…は…恥ずかしいし…」

顔を伏せるハルヒ。顔は真っ赤。そんなハルヒに俺は口付けた。

「ん―――――」

嫌がっているような事を言いつつも、ハルヒはしっかり目を閉じていた。少しだけ、長くして俺は唇を離す。

「バカ…」

「バカでけっこう」

キス。自分の想いが伝わる行為。愛を確かめあう行為。分かったのはハルヒと付き合い出してからだった。
ならば、アイツはキスを、一体何のためにしたのだろうか。


ハルヒと別れて、家に帰った。すぐに部屋へと直行する。

「クソ野郎が―――」

自分への言葉。アイツからの心配を無理矢理ごまかした。アイツの気持ちを利用してキスでごまかした。
罪悪感が今の俺を責める。ハルヒとのメールは毎晩している。今日はそんな気分になれなかった。

『今日言った通り、疲れているかもしれないから先に寝る。明日には元気になってるから。ありがとな。オヤスミ――――。キスは最高だった』

そんなメールを送った。内容の全ては本当でありながら、少しの嘘が混じっていた。また嘘を重ねていく。そんな自分。俺はベッドに仰向けになりながら昔の、佐々木とのあの一日に思考を奪われた――――。

//////////////////////////////////////////////

「すまないな。佐々木。わざわざ来てもらって」

「構わないよ。君が勉学において成長していくのを見るのは、僕にとっても一つの娯楽だからね」

その日、たまたまウチには誰も居なかった。だが、今さらそんなことを意識するような間柄ではなく、俺は勉強を教えてもらうために佐々木をウチに呼んでいた。私立高校の試験は少しだけ公立より少し早い。そのため、佐々木はもう試験から解放され、俺も特に遠慮することなく佐々木に頼むことが出来た。

「もう試験は後三日後か…。君の成長は早いとはいえここから分からないところを頭に詰めても、それを試験に使えるとは限らないよ?」

「大丈夫さ。数学が一個か二個ほど危ない内容があってな。それだけならすぐにどうとでもなる」

「くっくっ。なかなか言うじゃないか君も」

勉強は進む。とはいえ、教えてもらうこと自体は少なかったので、割りとすぐに終わる局面を迎える。

「お…ラストだ」

「なかなか早いじゃないか」

最後の問題を解き終わり、終了。これで滞りなく、三日後の試験を受けられる。俺の内申点と、試験の点数を合わせれば恐らく、受かる位置に俺はいるだろう。

「ふぅ…終わったな」

「お疲れさまだね。キョン。しかし君はよく成長したね。あんなギリギリスレスレから、これほど早く合格圏内にいくなんて…普段から勉強していれば僕と同じ高校にも受かれたんじゃないかい?」

「そりゃ買い被りだ。俺のオツムじゃ無理だ。それにそんな超進学校に行っちまったら、俺の目標にする平和な学校生活が送れなくなるだろう」

「そうか。まあ君らしいと言えばらしいかな」

会話を交わしながら、ここまで世話になっておいて、流石に何も出さないのは道徳に反すると思ったので「飲み物と菓子でも持ってくる」という言葉を残し、俺は部屋を出た。
台所を漁ってみれば、そこには他人に出しても恥ずかしくないような菓子が多少ある。後で母親に何か言われる可能性もあるが、佐々木に出したと言えば許してくれるだろう。
それと、コップ二つと、パックの麦茶を盆に乗せ、二階へと運ぶ。

「持ってきたぞ」

「すまないね」

勉強机は片付けられていた。佐々木がやってくれたようだ。ありがたい。

「今日のはなかなか上等な菓子だぜ」

「ほぅ。それは。君のお母さんに感謝しなければね」

「俺じゃないのかよ」

「君が買ったわけではないだろう」

「…ま。そうか」

並んで菓子を食べ、飲み物を飲む。そこでなんだか、ふと思った。

「そういやもうすぐ卒業か…」

「忘れていたのかい?」

「まあ受験のことで頭が一杯でな。一つのことに夢中になると、大事なはずである出来事も頭から抜けてしまうものなんだよ」

「そこは同意するよ。けれど、本当に大事だと思っていたら、そうそう忘れるものではないだろう。君は随分と薄情だ」

佐々木の口調――少しだけ責める色が混じっている。珍しいと思った。

「そう責めないでくれよ。頼むから頑張って勉強した証だと思ってくれ」

「…ふぅ。そうだね。責めるつもりは無かったんだけど思わずそんな口調になってしまったよ。すまないね」

「構わないさ」
佐々木は何故卒業のことを忘れていた俺を責めたのか。
分からなかった。この時の俺には。

しばらくして佐々木は帰ることになった。

「お邪魔したね」

「いや、俺のために来てくれたんだから、そんな風に言わなくて良いって」

「社交辞令というやつさ。じゃあこれから大変だろうが頑張ってくれ。キョン。友人として君の合格を陰ながら祈らせてもらうよ」

「ああ。祈っててくれ」

今日は贈らなくて良いと佐々木に言われていたので、ここで別れることになる。もう塾の授業はない。しばらく学校以外で会うことはなくなるだろう。

「キョン――――」

「ん?」

玄関の扉に手をかけて、俺に背を向けたままふいに佐々木は俺を呼んだ。なんだか、真剣さが入り混じった声だった。

「前に僕が恋愛について語ったことを覚えているかい?」

恋愛について。確か佐々木は言っていた。

「覚えているさ。精神病。一時の気の迷い。だろ?」
礼儀に淡々と、佐々木そう言っていた。
変わっているかもしれなかったが、それも佐々木だろうと俺は思っていた。

「そう…。気の迷い。精神病。だから――――」

―――――ん

―――――振り向いた佐々木がした行為。
それは俺と唇を重ねること。俺の目の前には目を閉じた佐々木の顔があって、俺は目なんか閉じている暇はなくて、頭に衝撃が走って。何も出来ずただつっ立ってその行為を受け入れていた。
やがて離れる唇。佐々木の顔。

「――――これも気の迷いだ。キョン。忘れて」

それだけ言い残し、佐々木は去って行った。俺はしばらく何も考えることが出来なくて、ただそこにいた。

それから次の日。もうすでに行かなくて良いことになっている学校へ行くだけ行くと、佐々木はいつも通りの佐々木だった。

『おはよう。キョン。どうしたんだい?元気が無いようだけど?恐らく今のキミなら試験など受かるんだ。そんなに煮詰めず、万全な状態で試験に望んでくれよ』

なんて言って。だから俺も気にしないことにした。やがて試験があって、卒業式があって。いつの間にかあのことは頭の中から消え去っていた。

/////////////////////////////////////////////

「アイツも…素直じゃない奴だったんだな」

一言、呟いた。
ハルヒと佐々木は似ていた。違うようで本質は似通っていた。だが、決定的な違いがあった。そこがハルヒと佐々木の差だった。
四月。一年振りに再会した佐々木。何も変わっていなかった。前の通りだと思った。それからちょくちょく会うようになっても佐々木は佐々木だった。ただ―――――ほんの少しだけ陰が見えた。それはたまに会う毎に大きくなっていた。
俺がハルヒと付き合い出した時から、それはもっと大きくなった。最初、理由は分からなかった。ハルヒとキスを重ねて、佐々木とのあの一日を思い出してから、やっと全てが繋がった。
そして、今。死ぬほどの罪悪感を感じている。キスの意味を明確に分かってから、自分の愚かさがを呪っている。

「このまんまじゃダメだよな」

今日、ハルヒは明らかに俺の様子を見て何かを勘づいていた。最低な方法でごまかしたが、そう何度もごまかせるものではない。いつか気付かれる。そうなった時、俺はどうすれば良いか分からない。だから明日、ケリを付ける。

////////////////////////////////////////////////

翌日。学校をサボった。ハルヒにはやはり体調が優れないという旨のメールを送った。返事は心配するような内容だった。俺はそれに謝罪の言葉と、明日には絶対に大丈夫だと返した。
ごめんハルヒ――――。心でそう深く思って。

「待ったかい?」

「いいや」

佐々木を呼び出した。学校をサボってくれという無茶な願いだったが、佐々木は了承してくれた。
勉強ばかりだからたまには良いさと言った。

「今日はすまないな。いきなりで、しかも無茶なことを言った」

「くっくっくっ。構わないさ。昔から学校にはちゃんと行っていた君がサボってまで僕を呼び出したとくれば、面白いイベントでも起こりそうだからね」

「そうかい」

それから俺たちが話したのは中学時代の思い出話。昔、あったこと。思い出。話すことで今まで忘れていたことすら脳を奥から引っ張り出される。

「…はは。どんどん思い出してくるな。今まで忘れてたくらいなのに」

「人は無意識に色々なことを記憶しているものさ。その記憶が、その時を共に過ごしていた人間と一緒に居ればそれを脳は引きずり出してくれる。人間の脳にはそんな便利な機能が備わっているものだよ」

「便利っちゃ…便利だな」

ならば佐々木も覚えているはずだった。あのことを。

「けれど…忘れたいと念じたことは忘れさせてくれない。当たり前なんだけどね。忘れたいと思っている時点で、その事を鮮明に覚えているということなのだから」

佐々木の言いたいこと。指していること。すぐに分かった。その言葉に俺は何も返さなかった。何度か会った時、佐々木はこんなようなことをいつも言っていた。だが俺が気付いたのは今。だからこその後悔だった。自己嫌悪だった。
訪れる沈黙。空気は明らかに変わった。

俺は佐々木を促して喫茶店を出ることにした。代金は俺が払った。佐々木はそれに黙って従い、俺の後に続く。少しだけ歩いて、川辺道の途中。俺は立ち止まった。佐々木が立ち止まったのも感じた。

「覚えてるか?」

振り向いて言った。佐々木は微笑んでいた。いつものように――だがどこか違う笑みで。

「何をだい?主語がなければ流石の僕でも分からないよ」

「あの日…俺にキスした日を」

ずっと今まで言わなかった話題。多分、無意識に避けていた。でも、いつまでも避けてはいられ
なくなった。

「…ズルいね。君は。やっと思いだして、その意味がわかって、早速聞くのか」

「…」

ズルい――自覚していた。何故ならこれは、

「僕が心配といよりも…涼宮さんにこれ以上君が悩んでいることで心配をさせたくないから、今日聞いたんだろう?」

「ああ」

ハルヒのためだから。佐々木の暗い表情も心配だった。けれど、それは一番大きな理由じゃなかった。一番は全てハルヒのためだった。意外と心配性なアイツにこれ以上気を遣わせないため。二つの理由。重みが違い過ぎる。

「君も…残酷な男だね」

「分かってるさ。だけど…俺の行動の根本にあるのがもうそれになっちまってるんだ。今さら変えられないし、変える気もない」

「そうか…。君らしい言い方で言うと、『ケリを付けたい』そういうことかな?」

「そうだ」

迷いは無かった。たとえかつての親友を傷付けたとしても。
それから再び訪れた沈黙。俺は佐々木の言葉を待った。佐々木はきっと言葉を探している。整理が付いたのか俺を真っ直ぐに見つめてきた。目を逸らさずに見返した。

「僕はね――私はキョンが好きだったんだ」

「ああ…」

半ば予想通りの言葉。けれど、胸が締め付けられる想いまではコントロール出来ない。女言葉で佐々木が言ったその言葉。明確な言葉。佐々木は続けた。

「恋愛なんて精神病の一種。気の迷い。それは今でもそう思ってるよ。考えは人の自由だから。その精神病にいつからか僕はかかっていた。くだらないと思いつつも――抑えは効かなかった。日に日にキョンのことばかり考えている自分がそこにいた。…恋愛を精神病や気の迷いと言ったことに後悔は無いよ。それは本当。だって、皆が『恋』と捉えている感情は、その人の本質まで見ないで『好きだ』と決め付けてしまうんだ。それを気の迷いと言わず何と呼ぶ?」

同じクラスに、話したこともない男を好きだと力説している女子がいた。その女子も含めたグループで堂々とそのことを相談していた。恋をしたと言っていた。友達と相談しながら、涙まで見せていた。絶対に男は素晴らしい人だと言っていた。――二ヶ月後、話してみたらロクなやつじゃないと言って吹っ切れていた。勝手に盛り上がって勝手に終わらす。身勝手な『気の迷い』。

「でもね…。他人から言えば同じなのかもしれないが、君へ対する僕の感情は気の迷いじゃない『恋』になっていった。自分でも感じた。始めは信じられなかったよ。でも段々とどうしようもなくなっていったんだ。感情を制御出来る理性的な人間だと自分では思っていたんだけどね…。君という人間の本質に触れる度、気持ちは膨らんでいったんだ」

言っていることは分かった。ハルヒと似ているから。俺もその感情を感じているから。ハルヒに対して。
そして両者共、精神病と言いながら、その感情自体を否定することはなかった。否定的ではあるが、『恋』が有り得ないとは言っていなかった。存在はすると言っていた。
―――俺に気の迷いなんかじゃないモノを抱いてくれていた。
だからハルヒは俺を好きになっていることを認めていて、俺が好きだということを認めてくれている。

「だから、あの時キスをした。…最も、君はあの意味すら理解してくれていなかったけどね。うやむやにした僕にも責任はある。だけれども、せめて分かって欲しかったよ。僕がどれだけ勇気を出したか。怖かったか。忘れてくれと言ったのか。翌日君と普通に語り合うだけのことにどれだけ精神力を使っていたか」

「…すまなかった」

言えることはそれだけ。女の子のキスの意味を分かっているつもりで分かってなかった俺が悪かった。忘れてくれという言葉の裏に込めた気持ちを理解していなかった俺が悪かった。そして、今、過去の傷跡を俺は抉っている。謝ること以外に出来ることはあった。だがまずは謝らなければならない。本当にすまなかったという気持ちを込めて。

「…いや僕こそすまない。僕にも勇気が足りなかったよ。その一言をハッキリ言えずに、忘れてくれと言って逃げ出してしまったからね」

佐々木は寂しそうに言った。自分の行動を後悔している声。
ハルヒとの違い。自分の行動を後悔するか否か―――。佐々木は前者でハルヒは後者だった。
だが佐々木はただ少しだけ素直になれなかっだけ。自分の気持ちが信じられなかっただけ。けれどそれが今を造り出した。
佐々木の表情は暗くなっていた。好きな男にもう手が届かないと知りつつも、過去の想いに縛られている。だから、前に進ませるのは俺しか出来ない。佐々木を失うかもしれない。でも進ませなきゃならない。

「佐々木」

俺は佐々木の名を呼んだ。佐々木は寂し気な表情のまま俺を見ていた。その表情を、俺は変える。より悪い方か、良い方に。

「…過去にお前を縛りつけていたのは俺だ。そして今も進めないでいるお前にしたのは俺だ。だから、俺はお前に心の底から謝りたいと思っている。身勝手なのは承知している。自覚している――――だが、俺はもうハルヒのためにしか動けない男になっちまった。ハルヒ以外の女はもう目に付かなくなっちまった。ハルヒが好きでたまらなくなった。そんな俺になった。キスの意味もそれで分かった。そんな俺の出来ることを言ってくれ」

――――佐々木は、きっと俺を忘れられないでいる。『恋』を教えた俺のことを。
だから俺は言った。もう今俺はハルヒのために居ると。ハルヒが好きだと。その上で俺の出来ることを言ってくれと。
それは、佐々木のためであり――結局は自分とハルヒのため。
クソ野郎――――。
自分に向けて。言ってどうなるわけでもない。分かっていた。

「本当に…残酷だよ…君は…」

「分かってる」

佐々木はそう言って俺の胸に顔を埋めた。俺は黙って受け入れた。声を押し殺して――佐々木は泣いていた。

////////////////////////////////////////////////

しばらくして、

「キョン…もう良いよ」

「…分かった」

胸から顔を話す佐々木。俺は最後まで立っているだけだった。両方の腕は、震える背中に回すことなく。

「さて…君にして欲しいことを言わせてもらうよ」

「…ああ」

佐々木は笑顔でそう言った。陰は少し残りながらも、ほとんど消えていた。
良い方にいってくれた――――。
不謹慎ながら嬉しかった。

「僕はもう代わりに人を好きになることは出来そうにない。君を好きなままでいることを了承してもらう。だから――ハッキリ言わしてもらおう。君か涼宮さんが少しでも道に迷った時、遠慮なく君を奪わしてもらうよ」

「お前」

それで良いのか――――?
聞こうと思って、止めた。前に進ませようとした俺の言葉。ある意味で仇になった。けれど佐々木の表情は吹っ切れたような表情。サッパリしたような顔。

「それが…お前の望むことなのか?」

「そうだよキョン。二年前、僕は弱かった。今までも弱かった。けれど今ここで、君の言葉で逆に決意が固まったよ。僕のこの気持ちが消えない限り、涼宮さんのライバルにならしてもらう。それがあの時気付けなかった君の責任であり、ただ勇気の無かった僕のワガママでもある。まさか拒否なんかしないだろうね?」

佐々木の言葉には強制力があった。ハルヒ達と会った時俺の親友だと名乗った佐々木。今もそう。だがそこに少しだけ俺に『恋』という感情を抱いているだけ。それで佐々木は良いらしい。

「やれやれ…か」

「全く。君は何とも言えないほど最低な奴だね。自分の今のために僕を傷付け、あまつさえ自分は今他の女性が何よりも好きだと宣言して、過去の清算を行おうとした。その上、やれやれだなんて」

「う…。確かにそうだが…」

言葉に少しだけ詰まる。だけど俺は一息おいて続けた。

「…でも恋愛なんか自分のエゴを貫いた方が良いんじゃないかと最近考えるんだ。自分たちが幸せにならなければ意味がないからな。結局、人間ってのは自分のことだけしか考えてないんだ。それが一番際立つのが恋愛だと思う。今の俺みたいに、好きな女のためだったら他人を傷つけることも覚悟するくらいさ」

「…その辺は同意せざるを得ないかな。僕も君たちにしてみればお邪魔虫のようなものだしね。けれど、やっぱり君が好きだという感情は消えないのさ。どんなにヒドい奴だと思っても、他人のことがどれだけ好きだと言おうとね。君は罪作りな男だな」

佐々木がいつもの調子を取り戻し、俺たちは中学時代のように語り合った。あの時のように。俺たちの友情はけっこう深いようだ。
俺のことを好きだと佐々木が言っていても、お互いそれすら受け入れられるようになってしまったのだから。もう、壊れることは無いだろう。そしていつの日か、本当に俺かハルヒが道に迷った時、佐々木が俺を奪いに来るのかもしれない。
だが多分、そんなことはないだろう――――。
佐々木の『恋』はいつか友情の念に飲み込まれる。やはり俺たちには似合わない。佐々木も分かっていた。分かっていたけれど、うやむやにしたままだったから進めなかった。佐々木にもう迷いはない。

「じゃあ…キョン。帰ろうか。自転車はあるだろう?」

「そうだな…。あの頃みたいにバス停まで送るよ」

佐々木との二人乗り。久々の感覚だった。ハルヒ以外はあまり乗せたくは無かったのだが、せめて今日は佐々木に従おうと決めていた。「親友」なんだからな。佐々木の要望で少しだけ遠回りをして、俺たちはバス停に到着した。

「…じゃあな佐々木」

「じゃあねキョン。本気になった僕は強いよ。覚悟すると良い」

佐々木はそう言ってバスに乗り込んで行った。二人いつも一緒だった中学最後の日々が少しだけ蘇り、消えた。これから、俺は前に進んでいかなきゃならない。意地っ張りで意外と負けず嫌いの「親友」のためにも。俺は一息吐いて、家路を急いだ――――。

////////////////////////////////////////////////////

家に到着。するとそこには、

「あれ?ハルヒ?」

ハルヒが門の前に立っていた。学校はもう終わっている時間。そこまで佐々木と話していたことに気付かなかった。時間が過ぎるのは意外と早い。

「あ。ハル…」

「おかえりなさいキョン」

言葉が遮られた。ハルヒの顔をよく見た。
――――あれ?怒ってる?
ハルヒは笑顔だった。だが、いつもの笑顔とは明らかに違った。青筋が浮かんで…怒りを隠せてない。つまりは怒りの笑顔。こわっ!

「あの…ハルヒ?」

「どうしたの?キョン?あ。安心しなさい。あたしは心が広いから――昨日元気なさそうなのが気になって、しかも今日も学校休んで、ものすごい心配してあげて果物まで持ってここに来たのに、古泉くんからアンタが佐々木さんと二人乗りして楽しそうにしてる写メールなんか送られてきても――怒ってなんかないから」

…古泉が一体全体どこで見たとかはともかくとして、これはマズイ。かなりマズイ。マズ過ぎる。ハルヒ、怒ってる。

「その…すまなかっ」

「理由を」

「えっと…過去の清算を済ましてきたというか」

「仲良く二人乗りなんかしちゃってるのに?」

「いやそれは…俺が悪かったから佐々木の願いを叶えてやりたかったという…」

「それでこんなにイチャイチャ?」

「…そう見えるのか?」

「見える」

蛇に睨まれたカエル。ごまかしの手を探す――無理だ。今のハルヒには無理だ。

「さて――キョン?」

ハルヒは笑顔だった。正し―――あまり見たくない部類の。

「…もうこの先しばらくキス厳禁!手も繋ぐの禁止!あたしの体のどの部分に触れるのも禁止!別れないだけありがたく思いなさい!この浮気者!!」

ゴッ――――!

「うお!」

そう言ってハルヒは俺に向かってフルーツの入った袋をぶん投げて、大股歩きで帰ってしまった。
ぶん投げられたフルーツが顔面に当たり俺はぶっ倒れた。
家の前に寝転びながら、佐々木はこうなることもお見通しだったんじゃないかと思った。ああ明日にはハルヒのご機嫌をあらゆる手段で取らなきゃならない。多分、今日は神人デーだ。でもまあ…俺のせい五割、古泉のせいも五割ってところだろう。アイツはハルヒのご機嫌取りより、自分が面白い方向に走ったようだ。うん。いつかシメよう。なんて思って俺はフルーツをおいしく頂こうと家に入った。

この後、翌日俺はハルヒのご機嫌取りに成功したが、佐々木がハルヒにライバル宣言をしてきて
俺をハルヒが尋問したのは、また別の話だ。
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thame:涼宮ハルヒss genre:小説・文学
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とっても良かったです
キョンはそのうち過去未来通じて色々清算しなきゃいけないような気がする
ササッキーはもう我慢してくださいとしか(笑)
これからも期待してます~
2008/03/09 Sun| URL | スライム [ edit ]
ナイス古泉!まるで「主人の浮気調査をして頂戴!」のようですねw
ツンデレ三角関係。こりゃなかなか収集つかなそうだ。

>キ…キスは一日一回って言ったじゃない!
ってのにものすごく萌えを感じてしまった私はおかしいのでしょうかwか、可愛い~!!

それとリンクありがとうございました。
こちらこそよろしくお願いします!
2008/03/09 Sun| URL | R254 [ edit ]
古泉自重ww
キョンは自らの鈍感さをちょっと顧みなければならないでしょうね。
鈍感ってのも罪なもんです。いや、キョンは異常ですがw
2008/03/09 Sun| URL | 911 [ edit ]
私、ヤキモチネタ大好きなんですw
この後続きますか!?
2008/03/10 Mon| URL | sksk1 [ edit ]
コメント返し
スライムさん>佐々木は一体どうだったんですかね…早く新刊見たいです!みんな同じ気持ちでしょうが!ありがとうございます!
R254さん>古泉はこんなキャラであって欲しいですね。ひっかきまわし役(笑)キスは一日一回って考えて、その姿を妄想した時、一人で超悶えてましたよ(笑)
よろしくお願いします!
2008/03/16 Sun| URL | koko428 [ edit ]
コメント返し2
911さん>キョンは原作でもけっこう鈍感ですよね。ssだと余計に際立たせちゃいますが(笑)
sksk1さん>ヤキモチネタになりきれなせんでしたが、続きは書きました!たぶん想像しているものとは違う感じになってしまっていると思います。その辺はご勘弁ください!
2008/03/16 Sun| URL | koko428 [ edit ]
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