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ジョイント195

自分が思いついた文章を徒然なるままに書くブログです。二次創作系。がんばっていきます!
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笑顔と未来の約束
今度は・・・キョン×みくるssです!正直、出そうかどうか迷いましたが・・・どうしても書きたかったテーマとうことでご容赦ください。卒業モノです。多分。どこかしらに結構あるものだと思います。けど、このブログ始める前から書きたかったものだったんで、upさせていただきます!もしハルキョン期待していた方がいたらごめんなさい!切ない系です。
そして・・・あまりいい出来映えじゃないと、自分で思えるのがちょっと寂しかったりします。でもまあ自分の実力を知りました。長い話は難しい・・・。あっさりし過ぎてるところは多いし、ツッコミ所もたくさんあるし・・・。とはいえ、20KBちょいなんですけどね・・・。これからも精進します。
sksk1様>リンク追加ありがとうございます。この場でお礼を言わしていただきます。
さて、ちょっと長いかもしれないのですが、暇でしたら見てやってください。それではどうぞ!
笑顔と未来の約束

出会いと別れ。誰にでもある出来事。これらは必ず一つのセットとなって誰かの元へ降り注ぐ。当たり前のこと。けれど、それが永遠に近い別れとなった時。それを経験する人は一気にその数を減らすだろう。出会いと別れ。一つのセット。出会ったらいつか別れてしまう。
『出会わなければ、別れの苦しみを味わうこともなかった』
よく聞くセリフ。それは間違っているのか正しいのか。俺は間違っていると思うんだ。出会いは楽しい。別れは悲しい。それで良いじゃないか。その一つ一つが確かに俺たちを強くしてくれるのだから。
恐れちゃいけない。出会いの先にある別れを。
別れの先には確かに未来が待っているのだから――――。



卒業式まで後一週間。とは言っても俺たちのじゃない。
我がSOS団唯一の先輩にして、癒しの象徴。朝比奈さんのだ。
寂しかった。みんな寂しがっていた。けれど来るものは仕方がない。最初の内はハルヒが時間をループさせるんじゃないかとヒヤヒヤしていたが、古泉曰く。
「涼宮さんの能力が弱まっているということは前にお話ししましたよね?それに…彼女も変わってきています。今回はすんなりいく。というのが僕の見解であり、機関の総意です。最も…不謹慎ながらこの場合はループが起こってくれなくて残念だとも言えますが…」
長門曰く。
「涼宮ハルヒの能力の弱体化。そして彼女の思考の変化。卒業という事象に対する理解。その全ての視点から見るとループは今回起こらないと推測される。…正直、残念だと感じている私がいる」

とのこと。つまりはもうループは起こらない。安心。
けれども、やはりみんな寂しがっていた。いつも居る人がいなくなる。この五人が変わる。
俺だって寂しかった。決められた三年という時間が悔しかった。
ただ一つの安心材料は、朝比奈さんは未来へ帰還するわけではないらしいということ。
これは本人から聞いた話しなので間違いはない。俺は満足していた。その言葉を信じきっていた。
―――バカ野郎だった。

卒業式を翌日に控えた日。SOS団部室には垂れ幕。みくるちゃん卒業記念パーティーと書いてある。ちなみに俺が書いた。過去最高に上手くかけた字だと自負している。部屋中にカラフルな飾り付けがされ、電求すらつけられていた。これらはなんと長門が準備したものだ。どこから持ってきたかは知らない。というか作り出したっぽい。
宇宙人もハメを外す方向らしい。良いことだ。多分。
「さて!明日は我がSOS団のマスコットキャラ、朝比奈みくるちゃんの卒業式です!みんな盛大に祝いなさい!じゃないと死刑だから!」
放課後、部室に集まった俺たち(朝比奈さん以外)は団長様の言葉を皮切りにどうやって盛大に祝おうかと計画を練る。
やはり礼儀というか本人不在のままだ。
朝比奈さんは今クラスの友達と前祝いでもしているんだろう。もう帰ってしまった。しかし、明日、必ず部室に来ると約束した。
主役が居なきゃパーティーの意味はないからな。
みんなで計画を練っている時間は最高に楽しかった。

それから下校時間となってみんな一緒に下校する。ハルヒは意気揚々と長門と一緒に前を歩く。長門は相変わらず寡黙だが。
俺と古泉はその少し後ろをついていく。
「良い傾向と言えば…良い傾向ですね」
「…そうだな」
世界がつまらないものと思い込んでいたハルヒ。そしてSOS団を作ったハルヒ。
そのSOS団が今変わろうとしている。一人減ってしまおうとしている。
それを素直に、ハルヒは祝おうとしている。この世界を楽しもうとしている。
「これも、あなたが傍にいたおかげといえばおかげですね」
「違うな」
俺だけじゃない。
「古泉、長門、…そして朝比奈さん。みんなが居たからだ」
俺だけじゃパーツは足りない。みんなが居たからハルヒはここまで変われた。笑顔になれた。楽しめた。
「…それはそれは」
余裕ぶったスマイルをかます古泉。
でもその笑顔は、本当に嬉しそうに見えた。

みんなと別れて、家路につく。この季節、夜は少し肌寒い。ジャケット着るべきだったな。
そう考えながら少しだけ早足になる。
その時だった。
「待って」
…心臓が止まるかと思った。後ろから声がしたからだ。振り向くとやはりそこには長門がいた。
「…あんまりビックリさせるなよ」
「…朝比奈みくるの伝言を…あなたに届けにに来た」
俺のセリフを全く無視して自分の用件を話す。長門。朝比奈さんが長門に伝言を託すとは珍しい。
そんな風に思いながら、長門の顔を見る。
暗がりのせいでよく見えないが、悲しそうな顔だった。
――――悲しそう?
なんなのだろうか。嫌な予感がした。
「今から、公園のベンチに来て欲しいとのこと」
声が少し震えていた。初めて見る長門だった。
「何でだ…?」
「…あなたには行って欲しい。お願い」
こんな時にも最低限のことしか伝えない長門。
違った。伝えられないくらい悲しんでいた。
「分かった」
俺は来た道を引き返そうと一歩踏み出す。その時に長門はもう一つ俺に告げた。
「悲しまないで…」
「保証しかねるな」

お前がそんな表情していたら説得力なんかないぜ。そう思って俺は全速力で駆け出した。
公園。桜は満開だった。そのすぐ傍にあるベンチに彼女は居た。
静かに腰かけて、顔はうつ向いたままだった。表情は伺えなかった。
「こんばんは」
俺の声に反応を示してくれた。少しだけ頷いた。相変わらず顔は見えない。
最悪の展開が予想された。打ち消そうと首を振った。消えなかった。
沈黙。俺は立ったまま動かなかった。
朝比奈さんが喋り出すのを待っていた。
自分から沈黙を破ることに決めた。
「話しって…なんですか?」
「…」
月光だけが静かに俺たちを照らしていた。
そして彼女は立ち上がった。顔を上げた。
目は、真っ赤だった。泣き腫らした顔だった。
「わたし…わたし…ごめ…ん。ごめんね。キョン君…」
当たって欲しくない予想が当たった。
胸が締め付けられるほど苦しい。呼吸が上手く出来ない。膝が震えた。手が震えた。唇を噛み締めた。まだ言ってない。朝比奈さんはまだ確実な言葉を言ってない。まだだ。まだ。ひょっとしたら、俺の予想と別のことを言うかもしれないじゃないか。
「好きな人出来ました」とか、「実はドッキリでした♪」とか。
ああそうだドッキリって線もありだな。
卒業まで後一日なんだ。こんな悪ノリだってありだろう。ああもう。嘘が上手いんだから。
――――じゃあなんで朝比奈さんは泣いているんだよ!
くだらない思考を理性で打ち消した。現実を認めろと自分で脳みそに命令を下した。
「みら…い…に…帰らなくちゃ…いけなく…なっちゃいました…」






―――――思考が止まった。彼女の言ったことを理解した。理解したくなかった。






「どうして…なんです?」
やっと絞り出せた言葉はそんなものだった。悲しんでいる彼女に追い討ちをかけるように、俺は理由を聞こうとしていた。
言ってから強い自己嫌悪。自分をぶん殴ってやりたかった。
けれどもう遅かった。うつ向いた彼女に俺の言葉は届いてしまった。
『言葉は猛獣である。一度解き放たれたら制御することなど不可能』
どこかの学者が言っていたことを思い出した。
「わから…ないんです…。最初は…この時間に留まって…」
そして切れた言葉。もう十分だった。未来の指令に逆らえない朝比奈さん。それにずっと苦しんでいた朝比奈さん。そしてその指令を出しているのも朝比奈さん。
同一人物のはずなのに、俺は未来の彼女に殺意にすら似た感情を抱いた。彼女を苦しめる彼女を憎んだ。矛盾だった。
彼女の涙は止まらなかった。溢れ出してただただ流れていくだけ。どれだけ拭いとったとしてもキリが無かった。
何でこの人がこんなに苦しまなきゃいけない!いつも一生懸命頑張って。頑張って、頑張って、頑張って。
やっとここに居られると思ったらこの仕打ちだ。
――――ふざけるな。
強く握られた拳。噛み締めた唇。
身体中を駆け巡る熱。彼女を見つめる。少し手を伸ばせば届く距離。なのに遠く感じた。何も出来ない自分。何か出来る自分。
彼女が望んでくれるか分からない。けれど、俺は――――彼女を包み込んだ。
小さい体は震えていた。寒さのせいじゃなかった。悲しみがそうさせていた。
温もりを感じた。
今にも消えそうな感覚に襲われた。
自分に出来ること―――自問自答。
彼女を苦しめているのはなんなのか。
彼女が悲しんでいるのはなんなのか。
考える。
その時だった。彼女が口を開いたのは。
「わたしは…わたしは―――――まだみんなと一緒にいたかった!何で今…。何でこれからも一緒に居たいと思った今になって離れなきゃならないの!?どうしてなの!卒業したって会えると思ったから頑張れたのに…。頑張ればここに居させてくれると思ったのに…。何で…何で帰らなきゃならないの!…えっく…ひっ…く…」
それは、心優しい少女が見せた、初めての怒りだった。本気でここに居たいと、みんなに会えるこの場所に居たいと、その思いを貫きたくて、出来なくて悲しんで。
そんな彼女に俺。いや俺たちの出来ること。一つしかなかった。
『悲しまないで』
長門の声が、頭の奥で聞こえた気がした。



「―――笑いましょう。朝比奈さん。」
「え?」
戸惑った声。当たり前だった。俺のセリフは場違いであり、この場に最も合う言葉だった。
「…俺だってあなたが居なくなるのは嫌です。みんなだって嫌なハズです。あの長門が、あなたが帰ることを感じ取って、悲しい顔をしてたんですよ」
「…ながと…さんが…?」
「ええ。嘘じゃないですよ。俺は長門の表情を見分けることなら誰にだって負けない自信があるんです。あんな長門は初めて見ました」
あんな長門は初めて見た。泣きそうな表情だった。それでも、俺に最良の行動が出来るようにヒントをくれた。
「…俺たちとは二度と会えないかもしれません。少なくとも、この時間の俺たちには会えなくなるかもしれません。…でも、これは俺のワガママですけど、あなたには笑っていて欲しい。最後の最後まで笑顔でいて欲しい。優しい笑顔の…朝比奈さんで居て欲しい。今はまだ無理かもしれないけど、お別れの時に涙は見せて欲しくないんです」
残酷な俺の願い。下手すれば朝比奈さんに無理をさせてしまう。
心を疲れさせてしまう。だとしても―――笑って欲しかった。心の底からの笑顔を見せて欲しかった。最後の最後が泣き顔なんて嫌だった。ガキのワガママ。それでもこれが最良だと、信じて揺るがない。
「わたし…自信ない…です。明日に、笑顔で居られる…そんな自信なんかない…」
「今は良いんです。こんな俺の胸で良ければ、好きなだけ使って下さい。むしろ光栄です。だから、俺のお願いです」
俺の言葉。一つ一つに想いを込めた。心の底からの願いを込めた。強い想いは伝わってくれる。そう信じて。
「キョン…くん…」
「はい」
「私…明日笑顔で居れる自信はまだ…持てないです…。でも頑張ります。がんば…り…ますから…今…いま…だけ、ないて…っく…ないても…良いです…か?」
俺の声、心からの願い。それは確かに彼女の心に伝わった。
「どうぞ」
「うっ…うっ…わぁぁぁぁん!」
俺の腕の中で、子供のように泣きじゃくる朝比奈さん。
その想いを受け止めながら、
俺も明日に笑えるように
彼女に気付かれないように
そっと静かに
涙をこぼした。
月光の下。二人で、明日のための涙を流した―――――。

しばらくして、朝比奈さんは落ち着いたようだった。泣き声も収まった。
「もう大丈夫…ですか?」
「はい…。ごめんなさい」
そうして俺は背中に回した腕を外した。
朝比奈さんは徐々に離れていく。
抱いていた温もりはまだ少しだけ残っている。
そして彼女は顔を上げてくれた。
相変わらずの泣き腫らした顔。けれどどこかスッキリしたようにも見えた。
少しだけ安心した。
「わたし…明日は頑張ります。頑張って笑顔でいます。だから…キョン君も絶対泣かないで。笑顔でいて」
「はい。分かりました」
彼女だけが笑顔でいなきゃいけないなんてフェアじゃない。
そう。俺も笑顔でいなきゃならない。
最後の最後。その時まで。
「うん!良かった!」
そして彼女は笑った―――。
その先にある悲しみを覆い隠すように、あるいは今心の底からの笑顔なのかもしれない。
どっちだって構わない。今は構わない。
俺たちが明日心の底から笑えるようにしてやるのみだ。
先にある別れなどその時まで忘れてしまえば良い。
「じゃあ、私帰りますね」
「送っていきますよ」
夜も遅い。まして朝比奈さんとなると心配過ぎてたまらない。
けれど朝比奈さんは首を横に振った。
「ううん…大丈夫!今日は一人で…ね?」
…心配だったが彼女なりの考えを優先させたかった。今日は一人で考えたいこともあるのだろう。
大丈夫だと祈ることにしよう。神に。
今ならハルヒが神でも良い。
不本意ながら申し出を引き下げる。
「分かりました。でも、本当に気を付けて下さいよ。あなたに何かあったら死んでお詫びしますから」
「えぇ!?駄目ですよ!そんなの!絶対駄目です!」
俺のジョークに全力で反応する朝比奈さん。けっこう必死。
やはりそれでこそいつもの朝比奈さんな気がした。
そしてそんな朝比奈さんを見ていると自然に笑顔になってしまう。
「くくっ…」
「あ!笑わないで下さいよ~。もう!キョン君なんか知らない!」
ぷいと顔を背けて、少しすねたような我が癒しの象徴。そんな姿さえ俺を優しい気持ちにさせてくれる。自然に笑わせてくれる。
それがこの人の持ってるものなんだろう。
「じゃあ…朝比奈さん」
俺がそう言うと彼女は俺の方へ向き直る。
今度は軽口ではなく、真面目な声を出した。そしてそれに朝比奈さんはしっかり答えようとしてくれていた。
「はい?」
「また明日…です」
彼女は表情を変えて、今日最高の笑顔になって。
「うん!また明日!」
明日の約束を俺たちは交わした。
最後まで笑顔で―――――それが明日の約束。

卒業式当日。
目覚めは良かった。頭もスッキリしていた。そして実感する。いよいよ今日なのだと。
「笑顔で…」
言葉に出して、今日自分がするべきただ一つのことを確認する。言い聞かせる。
「…よし!」
自分でも珍しく、気合いを一つ入れて、俺は着替えを開始した。

学校は独特の雰囲気に包まれていた。
門出を迎える。卒業生たち。それを祝う者たち。
俺は祝う側。とはいう後一年も経てば俺も祝われる側となる。
一年。長いようで短い気がした。暦は早く進んでいく。俺たちが思うより。
そんな中、俺は中庭に古泉といた。いつかのベンチ。二人分のコーヒー。今回は俺のオゴリだ。
「もう知っている…よな?」
朝比奈さんが未来に帰ること。とは言わなかった。言うだけ野暮だと思った。
「ええ…しかしひどいですね。僕だけに話してくれないなんて」
「俺がか?」
「朝比奈さんもあなたもです。信用されてないんでしょうか」
いつものスマイルで話す古泉。少しだけ寂しげに言う。けれど軽口だとすぐに分かった。
「そう言ってくれるなよ。朝比奈さんは、すでにお前が情報を掴んでると思ってたんだろうよ」
「実際その通りですからぐうの音もでませんね」
そうやって古泉は肩をすくめて笑った。
しかし今になって少し可哀想なことをした気がする。昨日の内、こいつに連絡することをすっかり忘れてしまっていた。
「それから、今日はな…」
「『最後まで笑顔で』ですよね。分かってますよ。長門さんから聞きましたから」
話しが早くて助かった。そして長門に感謝した。
昨日俺は長門に電話をかけていた。最後まで笑顔を彼女の卒業を居祝うことを約束していた。
『あなたは…やっぱり強い』
そう言われた。違かった。俺は弱い。だからこそ長門にも協力を仰がなければならなかった。一人では笑顔で送り出すことなど出来はしない。
「それにしても…お分かりですか?朝比奈さんが直接に未来へ帰ることを伝えたのはあなただけだということを」
「まぁ…な」
長門は伝言を任された。その時にはすでに知っていた。けれども朝比奈さんの口から直接聞いたわけではない。
古泉も機関の情報網で聞いただけだ。
とはいえ別にこの二人と朝比奈さんが仲違いしているわけじゃない。
俺には、三人には何か暗黙の了解があるように感じるのだ。
未来人、宇宙人、超能力者。そしてそれぞれの組織。
直接は語らないが分かりあっている。
そんなふうに感じる。
「僕たちの場合は…あなたの想像通りだと思います。僕たちは仲間であり、別々の思惑をそれぞれ持っていますから。けれど、信頼関係は強まったと僕は感じているし、彼女たちも同様だと確信していますよ」
こいつが言うからには間違いないだろう。
「まあそれも言いたかったことの一つですが、僕が伝えたかったことはもっと別のことです。朝比奈さんがあなただけに直接伝えた。その意味。僕たちが暗黙の了解で繋がりあっているから、あなたには直接言ったというのも一つの側面ではあります。ですがもっと人間的な部分が存在していると僕は考えます」
「…分かっているさ」
分かっていた。俺だけが伝えられたその意味。吐き出してくれた彼女の怒り。初めて俺だけに見せてくれた表情だった。
「ならば、僕は…全てをあなたにお任せしますよ」
「…良いのか?」
言外の意味――――ハルヒのことは良いのか?
「構わない…とは本当は言ってはいけない立場なんですけどね。僕は思うんです。あなたは―――――僕たち全てにとっての『鍵』だと」
「…買い被りだぜ」
俺がその「鍵」だとしたら万能過ぎる気がする。マスターキーにはなれそうにない。ただ一つのものしか開けられない。変幻自在ではあるが。そしてその形は今出来上がりつつある。
「買い被りだとは思いませんけどね。では、行きましょうか。そろそろ始まります」
「ああ」
俺の言葉に古泉は少し苦笑して、俺たちは立ち上がった。そして会場となる体育館へと戻る。式まであと少し。そんな時、不意に古泉は言った。
「いろいろな事を話してしまいましたが今はとにかく、祝いましょう。彼女の門出を。笑顔でね」
「…そうだな。当たり前だ」
そうやって俺たちは笑顔を交わした。

式はつつがなく流れていった。卒業証書を受け取って、歌を唄って、閉式の言葉を言って。
そして終わった。
現在、朝比奈さんを除いたメンバーは部室にいた。当日にしか出来ない準備というのもいろいろある。
それを完璧にこなしたかったからだ。そのため式が全て終わった瞬間からすぐに部室に来た。
「さて、いよいよ当日です!みくるちゃんが入ってきたらこのクラッカーを鳴らしなさい!そしてみんなでプレゼントね♪」
プレゼントは買っていた。一週間前に、あれこれ悩んで買ったものだ。喜んでもらえると良い。
少しだけチラリと長門の方を向いた。
長門も俺を見ていた。
『大丈夫?』
目はそう言っていた。心配そうな顔だった。多分きっと、俺にしか分からないが。
俺は笑ってやった。
そして言った。
「大丈夫だ…そっちこそ頼むぜ長門」
余計な言葉はいらない。ただそれだけで全てを理解してくれるだろう。
「…分かった」
長門は少し、ほんの少しだけ微笑んでくれた。
それで十分。祝う気持ちは整った。真実を知らないハルヒも、俺も、長門も、古泉も。
笑って送り出すだけだ。あの誰よりも優しい人を。
その時。
ガチャ――――。
開けられるドア。そこに居たのは当然。
「すいません!遅くなっちゃい…」
我がSOS団のマスコットキャラにして癒しの象徴。そして唯一の上級生。
「今よ!」
パァン―――――!
朝比奈さんが言い終わる前にクラッカーが鳴らされる。
「ふぁ!」
やっぱり予想通り驚いた彼女。慌てる彼女。そして、笑顔の彼女。
「い…いきなりビックリしましたよ~」
そんな彼女の一つ一つの動作を目に焼き付けよう。
俺はそう誓った。
遂に五人の最後のパーティーは始まった。

「ほらほら次よ!みくるちゃん!」
「わ!そんなたくさん着れませんよ~」
プレゼントを渡す時間。なんとハルヒのものは全て朝比奈さんのコスプレグッズだった。今まで着たことがないものばかり。さすがというか。なんというか。
「ダ~メ!みんなも見たいわよね?!」
「同感ですね」
「…見てみたい」
「同じく」
「えぇ~?…分かりました~。じゃあ次です!」
今日くらい無礼講だろう。それに朝比奈さんも嫌がってないようだしな。前々から思っていたが、ハルヒの着せ替え人形にされてる内に自分でもハマってしまったんじゃないかと思う。
「珍しく乗り気じゃないの!団長として嬉しいわ!はい!じゃあ男共出ていきなさい!」
「はいよ」
「了承です」
部室の外へ。今日何回も繰り返している行為だ。
「大丈夫…そうですね」
「みたいだな」
朝比奈さんは笑っていた。楽しそうに。まだまだこの時間が続いていくと思わせるように。
「僕はかなり心配していたんですけどね。やはりあなたとの約束が効いているようです」
「…だと良いんだけどな」
彼女の中にある気持ちまでは分からない。けれど、少なくとも今の笑顔は唯一無二の本物なんだ。
「入って良いわよ~!」
聞こえてくるハルヒの声と、恥ずかしがっているような朝比奈さんの声。
「お呼びですね」
「だな」
二人して部室のドアを開ける。今度のコスプレ――――というか普通の服だった。
「どう!似合ってるでしょ!」
ハルヒは自信満々な顔で言った。
その通りだった。朝比奈さんの雰囲気とその清楚な服はよくマッチしている。まるで本物の天使。
そして気付いた。ハルヒの本当のプレゼント。それはこれ。
朝比奈さんに良く似合うもの。
流石だよ。ハルヒ。
「そうですね…本当に良くお似合いです」
古泉は言った。スマイル二割増し。分かりづらいこいつの本音。
俺も同じことしか言えないな。
「本当に似合ってますよ」
一瞬天使かと思ったくらいです。
とは言わない。流石にちょっとクサ過ぎる。
「あ…ありがとうございます!」
笑顔で返す彼女。
それで十分と思った。
「さて次は他の団員たちからのプレゼントがあります!しっかり受け取りなさいよ!みくるちゃん!」
「あ…はい!」
「では…僕から」
古泉がバックから取り出したのは、ラッピングされた小さめの包み。外から見た限り、形状は腕に付けるアクセサリー。問題なのは袋に書いてある文字。どう見てもブランドもの…ってお前。
「今日くらい…ですよ」
渡す前に俺に耳打ち。なるほど。機関か。
「どうぞ。朝比奈さん」
「こ…こんなに高そうなの!私…」
「無礼講…ですよ」
「あ…うん!分かりました!ありがとう!」
一瞬受け取るのを戸惑った朝比奈さんだったが、古泉の意図することを感じとったのか素直に受け取った。それにしても…まさか古泉もここまでやるとは思わなかった。
機関の経費で落とすのだろう。
「さすがね!古泉くん!じゃあ次は有希!」
「分かった…」
そして長門も同じようにバックから。小さな包み。
「イヤリング…」
長門のことだから、バカデカイぬいぐるみとかを渡すのかと思った。
けれど、意外に普通のもの。…俺の考えが失礼過ぎたのかもしれない。
「うん!ありがとう!長門さん!」
嬉しそうな顔。無理もない。長門に苦手意識があった彼女だ。
長門からプレゼントを受け取れば嬉しいに決まっている。
そして、ラスト。団長さまは俺を見た。
「さ!トリはキョンよ!ちゃんと渡しなさいよ!」
「言われなくとも」
そうして俺はバックから小さな包みを取り出す。前の二人からすれば少しインパクトに欠けるが、これでも頑張って探し出したものだ
「どうぞ。朝比奈さん」
「あ…ありがとうございます。キョン君」
包みを手渡す。中にあるのは桜の花びらを型どった、ワンポイントのネックレス。つまらないものかもしれないが、アホみたいに歩き回って手に入れた一品だ。自分に出来る範囲でのもの。みんな自分に出来ることをやって、自分が最高だと思ったプレゼントを渡した。それで良いのさ。
「キョンのだけ、中身がよく分かんないわね~。ま、良いけど!どうせ大したものじゃないんでしょ」
「さぁどうかな」
ハルヒの悪態。いつものことだ。それに余裕シャクシャクで返す俺。
「へ~。アンタにしては自信満々じゃないの。じゃあみくるちゃんがもし気に入らなかったら死刑ね♪」
「甘んじて受けてやるよ」
そんなもの受けて立ってやるさ。彼女が気に入らないなんて有り得ないんだから。
「ダ…ダメですよぅ!私、もらえるだけで嬉しいですから!」
「みくるちゃん…あなたはもっと欲張って良いのよ~。男に貢がせるくらいになりなさい!」
「えぇ~そんな~」

パーティーの時間は過ぎていく。楽しい時間は過ぎていく。楽しい時間の流は早くて残酷だ。分かっていた。昔から知っていた。知っていてもどうしようも無かった。
やがて、日も沈み、夜も更けてくる。お開きの時間。来て欲しくなかった、その時間。
「ふ~。じゃあそろそろ遅いし、解散にしましょうか!」
ハルヒの解散宣言。
パーティーの終わり。いつかは来る時間だ。受け入れなければならない。
そしてハルヒは急に顔付きを変えて朝比奈さんに向き直った。
「みくるちゃん…今までありがとう。この団に居てくれて。アタシは本当に楽しかった。…少し無理させ過ぎちゃったこともあったけどね。それでも、ずっとアタシ達と過ごしてくれたのは嬉しかった。本当に、ありがとう」
ハルヒの言葉を聞いて、それを言ったハルヒの表情を見て、思った。多分、ハルヒは勘づいている。朝比奈さんがどこかへ行ってしまうことを。けど、それを知りながら何も知らないような振る舞いが出来るんだ。
朝比奈さんが話したくないならそれで良い。団の仲間がそう思ったんならそれで良い。
それがハルヒの考えなんだろう。だからここで言ったんだ。自分の言いたかったことを。
「涼宮さん…」
そのハルヒの気持ちを少しでも感じとったのか、寂しげな顔をする朝比奈さん。そんな顔にしてしまったハルヒの言葉。
けれど。
「ま!春休みもまだまだ活動するからね!予定送るからちゃんと来なきゃダメよ!」
そんな顔を笑顔に変えてくれるのもハルヒ。太陽みたいな笑顔で言う。
それを見て、朝比奈さんも笑顔になる。笑顔になれる。
「あ…はい!」
朝比奈さんは元気よく返事をする。それで良いんだ。今はまだそれで。
「私も…あなたと居れて楽しかった…ありがとう」
長門の言葉。
「僕もです。朝比奈さんの煎れてくれたお茶が飲めないのは寂しいですけど…これからは自分で煎れてみますよ。お疲れさまでした」
古泉の言葉。
「朝比奈さん、お疲れさまでした。そして…ありがとうございました」
俺の言葉。
みんなの想い。
それに。
「うん…。みんな…本当に…本当に…」
そこで一旦言葉を切って、彼女は最高の笑顔で告げた。告げてくれた。
「ありがとう!」

あの後、みんな各々の家へと帰って行った。集団下校で一人、また一人と減っていくのはなんだか寂しい気がした。
そして俺はもう一度彼女に会うため、あの公園に向かっている。
「やっぱり…夜は寒いよな」
独り呟く。春。昼は暖かいとはいえ夜はまだ冷える。彼女はおそらく先に来て待っている。そういう人だから。夜桜の舞う公園。そこに彼女はやはり居た。寒い中一人で待たしてしまったのは申し訳ない。
昨日とは確実に違うのはその表情。穏やかな笑顔。舞うさくらの木の下に彼女は笑顔で立っている。
ハルヒのプレゼントの服を着ていた。古泉のプレゼントのアクセサリーを腕に付けていた。長門のイヤリングを耳に付けていた。
――――俺のネックレスを首に付けてくれていた。
「こんばんは」
「こんばんは。すいません。遅くなっちゃって」
「ううん。大丈夫。そんなに長い時間待ってないから」
彼女の声は穏やかだった。俺の声も穏やかだった。
「今日は楽しかったです。始めの内は、私笑顔で頑張ろうとしてたんですけど…そんな必要ありませんでした」
言葉の後、エヘッと舌を出して自分の頭をコツンとする朝比奈さん。可愛いらしかった。
「俺も、同じです。楽しくて、無理に笑顔で居る必要なんか無かったですよ」
エヘッ。コツン。
そんな俺を見て彼女はおかしそうに笑った。
「あはは!キョン君そんなの変ですよ~」
「そうですか?けっこう自信あったんですけど…。朝比奈さんのモノマネ」
「絶対みんな似てないって言いますよ~」
公園のライトが他愛の無い会話を交わす俺たちを照らしている。夜桜が舞うのを照らしている。その内に彼女は言った。
「もう…そろそろ時間です。私はこの時間から居なくなります」
「そう…ですか。そうですよね。ちょっと早いですけど」
「うん…あ。涼宮さんたちには、私が海外に行ったことになるよう長門さんにお願いしておきましたから…安心して。最も…涼宮さんは全部勘づいてるかもしれないですけど」
「多分…そうですね」
ハルヒは多分、そのことを二つ返事で了承するだろう。ハルヒは強い人間だった。俺がハルヒの立場だったら耐えられそうにない。
事実を知らないまま朝比奈さんが消えてしまったら…考えるだけで駄目だった。
「だから…キョン君」
「はい」
「サヨナラ…です」
それを言った時。彼女の笑顔が崩れた。泣くのを必死に堪えて笑顔になろうとしていた。
「ごめんね…。最後の最後まで笑っていたかったのに…。ダメ…みたい」
そんな彼女を守りたかった。今の俺は彼女にとっての鍵になっていた。
「朝比奈さん」
「うん…」
「俺は…絶対忘れませんから。あなたと出会ったこと、過ごした時間。全部ひっくるめて絶対に忘れませんから。だから…」
「キョン君…」
「あなたが帰る場所。未来のこの場所に俺は居ます。少なくとも俺は生きているはずです。この約束を覚えているはすです。俺の未来はどうなっているかなんて分からない。けど、この約束だけはずっと、永久に忘れません。未来に居る俺がその答えです」
俺の出来ることなどこれだけだった。遠い未来の果ての約束。
彼女に出来る俺の役目。たった一つの扉しか開られけない、けれど、変幻自在の鍵。それが俺。その人にとっての自分の役目。それはこれだけ。
彼女が帰ると知った時に始まった恋は、彼女に対して自分の出来ることが分かった時に終わりかけている――――。
それが俺の恋。決して叶わぬ、叶ってはいけない恋。彼女の時代には彼女の生活がある。いくらこの時代に居ることを彼女が望んでいたとしても、それはあるべき姿ではなかった。未来の彼女はそうやって生きてきた。
だから、俺は彼女を縛るわけにはいかない。
「キョン君…ありがとう…」
きゅ―――――。
抱きついてきた彼女を受け止める。これからしばらくは会えなくなる。温もりを覚えておきたかった。彼女が消えてしまうその時まで。一度目のサヨナラの最後まで。
「お願い…聞いてもらって良いですか?」
腕の中で彼女は問いかけてきた。それが何であっても叶えるつもりだった。
「キス…お願いします」
「はい…」
腕の中の彼女にキスをする。長い長いキスだった。そこには温もりがあった。伝わってくるものがあった。
頭の中がとろけそうになる。
唇を離した。名残惜しいと思った。けれどこれ以上はもうダメだった。
「ありがとう…キョン君」
その時。強い風が吹いた。目の前が桜の花びらで埋め付くされた。何も見えなくなった。そして――――腕の中の温もりは消えていた。
「ありがとう…朝比奈さん」
消えてしまった彼女。もう触れられないところへ行ってしまった彼女。けれど、最後に見た彼女の表情は。

『ありがとう…キョン君』

優しい、笑顔だった。

エピローグ

あれから六十年。俺はもう老人。妻も居る。子供も居る。孫も居る。
これまでいろいろなことがあった。
それでもこの約束は覚えて居た。
六十年前のこと。しっかりと脳裏に焼き付いて昨日のことのようだ。
「さてね…」
やっと彼女の居る時代。まさか六十年とは思わなかった。時間移動関係の仕事をしている友人から教えてもらった。彼女がこの時代に帰ってくると。
だからこの約束の場所へ来た。彼女は俺だと気付いてくれるだろうか。いや必ず気づいてくれるだろう。
桜の木は満開だった――――。
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thame:涼宮ハルヒss genre:小説・文学
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Comment

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これは泣けます・゚・(つД`)・゚・
60年後、笑顔で再会できたことを願って。
2008/02/21 Thu| URL | 911 [ edit ]
コメント返し
またまたコメントありがとうございます!60年というのはなんとなくそんな感じだと思ったからです。時間経ちすぎかな~とか思いましたが、このくらいの長さに収まりました。これからもよろしくお願いします!
2008/02/23 Sat| URL | koko428 [ edit ]
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